実はとっても緊張し、色々心配していたロンドンでの日本茶マスタークラス。
これは、日本茶海外輸出促進振興会が主宰し、日本から日本茶のプロの方を3名飛んで来て下さっての実に充実した1日クラスです。
金曜日、土曜日ともに満席。
イギリスでの日本茶人気を伺わせます。
参加者の中には、遠くコーンウォールやドーセットから来た方、それどころかユーロスターでベルギーから来た方、飛行機でドイツから飛んで来て下さった方もいました。
ほとんどが、私が講師を勤めるU.K.ティーアカデミーの元・現生徒さんですが、私が過去に行ったセミナーの参加者やネットで見て申し込まれた方もいます。
アカデミーに参加するためにオーストラリアや南米から来ている方もいて、この時期にロンドンにいられて本当に良かった!と興奮していました。
日本茶アドバイザーはもうかなり前に資格を取りましたが、2年前に日本茶インストラクターの資格を取り、それとほぼ同時にイギリスでの日本茶大使に任命していただいて、これが初めての大きな仕事でした。イギリスにはもうひとり、日本茶大使のMさんがいらっしゃいますので、彼女とふたりで日本チームと前日の打ち合わせをし、本番に挑みました。
私の左が元日本茶インストラクター会副理事長の古市さん。
その左が日本茶海外輸出促進振興会のオスカル・ブレケルさん。
左から2番めが静岡県立大学の中村順行教授です。
まずは私が日本茶の歴史について講義し、その後ブレケルさんの講義。
スウェーデン人のブレケルさんは英語もさることながら、日本語が完璧です。これほど完璧に読み書きまでできる方は初めて。
1年間静岡で勉強されたブレケルさんは、最初に自分が日本茶のどこに戸惑ったかがわかっているだけに、こうして日本以外の方にお話されるポイントはとてもしっかり押さえていました。
私が特に面白いと思ったのが、品種の話。
日本茶はほとんどがブレンドされて販売されるため、こうして品種別の味わいを比べられるのは、産地を訪れたり掛川市でJAや茶農家さんを訪れた時くらいでした。
こんな飲み比べがロンドンでできるなんて、参加者はすごくラッキー!
そしてこの中のひとつ、香駿という品種を作られたのが、今回ご一緒している中村先生なのです!
何を質問しても、丁寧に優しく教えてくださる中村先生、ファンになってしまいました。
中村先生のお茶と科学の講義、古市さんの品質鑑定についての講義の後、実際に品質鑑定をしていただきました。
茶種別のテーブルでは煎茶、私が掛川茶大使をしている掛川で沢山作られている深蒸し茶、玉露、ほうじ茶、玄米茶、そして抹茶の材料であるてん茶。
もうひとつのテーブルでは一番茶、二番茶、荒茶、仕上げ茶など、同じ煎茶でも質が違うものを見ていただきました。
私がインストラクターの資格試験で一番驚いたのが、日本茶は外観と言って見た目だけで品質を判定しなくてはならないことです。
幸いテストのために、私は日本の茶師十段の先生に随分訓練していただきましたから、何とか説明できました。
それにわからないことは、お隣ににこにこと穏やかに立たれている中村先生に伺えば100%なんでもわかりますから・・・・。
みんな真剣そのもの!
古市さんは明るくて、テキパキされているのでイギリス人には親しみやすく感じられるのか人気がありました。
次に内質審査と言って、まずは一つのカップで香りを判定します。
その後新たに別のカップにお茶を作り、味をみます。
完璧な采配を振るう古市さん。
準備から当日の手順まで、本当に素晴らしくて、私にはすごく勉強になりました。
匂いはこうやってあみさじですくってかぐんですよ。
最後に淹れ方実習です。
3つのグループに分かれ、それぞれ抹茶、玉露、煎茶を淹れていただきます。
抹茶はMさんが担当、皆さん上手く泡が!などと賑やか。
きっちり予習されてきただけあってMさんの点て方の指導はわかりやすく、私も教えてもらいました。
私が担当したのは玉露です。
これが個人的に一番やりがいがあるの・・・・。
それはなぜかというと
まず、玉露用の器を見たことがない!
という方が多く、初めてなのですごく真剣に聞いてもらえます。
その上、一口飲んだ後の反応がすごい!
今回もばーん、と椅子の背もたれに倒れかかって
「完全にノックアウトされた!」と叫んだ男性がいました(笑)。
これはU.K.ティーアカデミーのコース・ダイレクターのジェーン・ペティグリューさん。
私のブログにもよく登場しますが、2016年にはイギリスでBEM(British Empire Medal)を受勲された、世界のジェーン、という感じの人です。
彼女は2016年に、私が掛川茶のセミナーをした際にも来てくれて、ずっと日本茶に興味を持ってくれています。
すでに今年に入ってから中国、アメリカとまさに世界で活躍するジェーンさんですが、アカデミーでも本当に生徒さんから慕われて尊敬されています。
このテーブルのふたりも生徒さん。
2日間ともアカデミーの卒業生や現在の生徒さんが沢山いて、私もソムリエコースを担当しているものですから沢山の生徒さんに「Asako,お久しぶり!」と声をかけてもらってとても楽しかったです!
2日間、ご一緒させていただいたのがこのチーム。
終わった後、大感激のメールを沢山いただいたことから、とても良いセミナーができたのだと思います。
「Enlightning」(啓発的な)という言葉を使った人が本当に多く、普段あまり聞かない言葉なだけに印象に残りました。
参加者の熱気、感謝の言葉、驚きの表情や疑問が解決した時の幸せそうな顔。
そんな表情を見ていると、どんなに大変な一日であっても疲れは吹き飛びます。
こんなに沢山日本茶について知りたくて、知ることでこんなに幸福になる人がいるなんて。
そしてまた、自分がものすごく勉強させていただいて、感謝の気持ちでいっぱいでした。
お茶を愛する人たち同士って、それが紅茶でも日本茶でも中国茶でも、すっとお互いの垣根を通り超えることが多くあります。
インドや中国、台湾をジェーンと一緒に旅した時に、ずっとそれを感じていたのですが、この日も改めてそれを実感しました。
そしてまた、インフューズ・ロンドンのサーティフィケートコースを、つい先日終了された生徒さんがおふたり参加してくださいました!
おふたりとも日本人としてもっと日本茶について知りたい、と思われたそうですが、この1日でおそらくロンドン在住の誰よりも日本茶通になったことと思います(笑)。
みんなで美味しい日本茶を世界に広めたいですね!
これからもイギリスでは日本茶大使として日本茶を、日本では紅茶の楽しみ方の普及に頑張って行こう!という気持ちがとっても高まりました。
日本でイギリスの紅茶について話をし、その時に感じた喜びを、こうしてイギリスで日本茶を伝えることで得られる日が来るなんて、本当に幸運としか言いようがありません。
生まれ育った日本と20年以上暮らすイギリスを、お茶で繋げる。
まだ勉強することが山ほどある、このライフワークはまだ始まったばかりです。