今回の日本滞在では、仕事だけではなくて静岡の「さすき園」さんで日本茶の製造を見せていただきに行きました。
私は日本紅茶協会のシニアティーインストラクターですが、日本茶アドバイザーの資格も持っています。
お茶類はどれも興味がありますし、今のイギリスでは圧倒的に緑茶関係の仕事の依頼の方が多いですから、もう何年か前に思い切って取った資格です。
紅茶の茶園、そして烏龍茶、中国緑茶の製造は随分たくさんの場所で見てきましたが、肝心の日本の緑茶は実はまだ2回目。それもここまでちゃんと稼働している工場を見学したのは初めてですのでもう大興奮でした!
「さすき園」さんは、静岡で明治20年から続くお茶業者さんです。
そこのお嬢さんの大塚さんが、もう10年ほど前に紅茶の勉強のためロンドンに留学され、私のところで勉強されました。
そのご縁で、一度工場を見学にいらしてください、と声をかけていただきながら、もう何年も過ぎてしまい・・・。
ようやく念願が叶いました。
今稼働してはいない方の、古くからの小さい工場も見せていただきました。
これは茶摘みに使われるというバスケット。
稼働している工場に移動。
おお、蒸してる!
紅茶と緑茶の一番の違いはここ、まず茶葉を蒸して酵素を不活性化させる工程です。
もうもうと上がる水蒸気。
でも、この高温の蒸気を当てるのは決して長い時間ではなく、せいぜい数分間で済みます。
それから茶葉は揉まれます。
一つの機械ではなく、だんだんにかさが減っていく茶葉に合わせて、機械も変える必要があるのですね。
この工場はとにかく最新鋭の機械で、ほとんどのことを科学的、物理的に計算した上でセットされているのですごいです。
紅茶の産地では、これらはまだほとんどがマネージャーの判断に任されていて、マネージャーが長年で培っていたカンや経験で全てを決めているところが多いです。
でも、ほとんどのことは、分析すればちゃんと理由があるわけで、長い歴史の中で受け継がれていることを、できる部分は数値化することには大きな意味があると私は思います。
長年の経験による茶師の方の判断は何ものにも代えがたい貴重なもので、こればかりは機械が代わりを務めることはできません。
でも、簡単に決まった数値をセットするわけではなくて、できる部分は状況に応じてそれに合う調整ができれば、誰かに依存することなくより確実に良質のお茶が作れるわけです。
途中で茶葉を取り出して見せていただいたり、臨場感あふれるでしょう~。
ちなみに私は工場に行くと、全部を見たい人なので、毎回見せてもらっているボイラー室も見せていただいたのですが、大塚さんによれば
「私、今までの工場見学で初めてボイラー室にご見学者をご案内いたしました、というかあのボイラー室に入ったことがあるのは、従業員とボイラー屋さん以外だと麻子先生が初めてだと思います。」
ということで・・・。
でもね、ダージリンの山の上で、ビクトリア時代に作られた巨大なボイラーがまだ稼働していたり、まあボイラーといえどもサイズとか台数とか気になるところなのですよ。
で、ここでもさらに茶葉を揉む、この機械は紅茶製造のローラーと似ています。
茶葉はほとんど人の手を借りることなく、刈り取られたらトラックで工場に運ばれ、規定の場所から自動的に工場内に流され、蒸し器を始めとした機械を次々に通っていきます。
ベルトコンベアーをずーっと追って行くと、非常に複雑にいくつもの機械が繋がっているのですが、これも限られた工場面積の中にこれだけの台数を置くという意味で、すごくよく考えられているのだなあ、と感動。
「こんなところに頭を突っ込む方は初めて」
というところに頭を突っ込み、よじ登り、とやっている間に、飛び交う茶葉とその繊維がどんどん髪や服についてしまい、気にもしていなかったのですが、最後にぶーん、というすごい機械(コンプレッサー)で、お掃除されました・・・。
紅茶の茶摘みはまだ手積みが中心ですが、こちらではこんなコンバインみたいな機械をお持ちです。
案内してくださったのはまだ若い大塚社長。
私と同じテンションで案内してくださるので、周りに放熱しそうなふたりでしたが、私が大喜びでまた危ない刃の部分にまで首を突っ込んでいたら、さっと飛び乗ってわざわざ動かしてくださいました。
イギリスの素敵なマナーハウスもいいけれど、私は工場にすごく興奮しますね。
もともとが好奇心旺盛な方で、なぜ?どうして?どうなっているの?
というのがすごく強く、何でも知りたい。
で、そこで育った人に話を聞くのが大好きです。
ものがどう動くのか、何がどう機能するのかも知りたいですが、そこに携わる人たちのこともとても興味があるのです。
しかし、日本語で見学できるのがこんなに効率いいとは・・・
よく考えたら、工場視察で日本語で説明していただけたのは初めてでした。
一番難しかったのは中国でしょうか、英語ができるガイドさんが一緒だったのですが、お茶用語になると英語でも中国語でも通じなくて、工場の中国人の方も、アメリカとイギリス人からなる視察団も途方にくれたのを思い出します。
最後には、私がほとんどを筆談しました。
「何割発酵?」
「紅七緑三」
とかね、なんとかなるものだなあ、と思いました。
今回は本当にスムースで、わかりやすくて、実に楽しい見学でした!
続きはまた書きます。
さすき園さんのことはこちらからご覧くださいね。
お茶のさすき