11月はじめの九州和紅茶サミットの際、前日に水俣の天野製茶さんに伺いました。以前雑誌で拝見してから、その世界観にとても興味があって、今回リクエストして念願が叶いました。
虎屋の紅茶羊羹の材料としての和紅茶をおさめられている天野さんですが、森と種とお茶という独自のブランドのお茶も作られています。
そのお話を数年前に伺ってからずっと気になっていたのですが、森を再生する、タネを撒く、お茶を作る、飲む、を一つにした「森のお茶会」なんです。
天野さんはベトナムから持ってきたというバスケットに、この日飲むお茶や茶道具なども入れて森に向かいます。私たちはそれぞれ、テーブルに飾りたいものを何でも森で集めてきてね、と言われて大喜び!
秋の森には実に沢山の魅力的なものが溢れています。
アケビ、鮮やかな色のカラス瓜、立ち枯れになったアンティークな色合いの紫陽花。色付いた紅葉とまだ青々しいもみじ。ススキの穂、赤い実や紫の実のなる木やつる。不思議な形の枝や苔が生えた石。
イギリスに住んでいた頃、近くの森で同じようにきれいな葉っぱや花を集めたことがありますが、それよりも思い出したのはイギリスの家族の実家が経営していた狩猟場のことでした。
狩猟場はものすごく広くて、狩猟用の雉がたくさんいましたし、野生の鹿の群れも見られました。
犬たちを散歩に連れて行き、そこで見つけたきれいな葉っぱや木の枝、秋の木の実などを集めてファームハウスに飾るのは楽しかったのを思い出しました。
自分の土地なら何を持ってきても問題ありませんが、よその方の土地で勝手にものを採集はできないので、今回天野さんがご自身の敷地内にあるものを集めてお茶会のテーブルを作る、というところにすごく懐かしさを感じました。
幻想的なお茶のテーブルが出来上がっていきます。
天野さんは美しいものへの感覚がとても優れている方でこの幻想的な光もテーブルの奥で焚いた焚き火の煙を木漏れ日が照らしているからなんです。
ロケーションもちょうど、後ろ側に木々が見えるあたり。
ごく小さいですが小川も流れています。
あけび、からすうり、くるみ。
大きな枝を中央に起き、苔が美しい石も配置されています。
ナッツ類が並ぶと中国や台湾のティータイムを思い出します。
器も天野さんがこだわっているものですから、秋の自然の恵みと一緒に置いた時にとても調和が取れています。
近くで採れた野生の梨は、飾りにもなりますが天野さんが煮て来てくださったのが美味しかったです。
地元のはちみつやパン。
みんなで手分けして探してきた木の枝や紅葉。
私は名前も知らないものもどんどん摘んできました。
ドーナツのように中央に穴があいた木のお皿。
中央にお茶碗を載せられます。
お茶碗はまるでメタルのような硬い輝きがありますが漆。
ソーサーはジビエの革でできたとても軽いものでした。
ティーポットなどは天野さんがお好きな作家さんのものが中心です。
どこから撮っても絵になります。
天野さんが作るお茶は、自然な味わいでふわりと香ります。
日本の紅茶だなぁとしみじみ感じる優しさがあります。
森と一体化したお茶会は、終わった後の片付けもシンプルです。
森から採取したものは森の土に帰り、カラス瓜などは鳥たちが食べてくれます。
森や環境を汚すものは出さず、何も残さずに、持ってきた茶道具をまた籠に入れて持ち帰るだけ。
これ以上に贅沢なお茶会があるでしょうか。
世界のお茶の動きを見ていると、環境や地域への取り組みをいかに真剣に行っているかがとても大切だということがわかります。
人と人との繋がりだけでなく、同じ価値観を持つ人たちがこうして森や自然と繋がりながらその恵である季節のお茶を楽しむ、素敵なお茶会体験でした。いつか、ご興味のある生徒さんたちをお連れしたいです!